MY LAVENHAM STORY-その9 ファッションディレクター 森岡弘さんが語る、ビジネス意識の変化とラベンハム

MY LAVENHAM STORY-その9 ファッションディレクター 森岡弘さんが語る、ビジネス意識の変化とラベンハム

MY LAVENHAM STORY-その9 ファッションディレクター 森岡弘さんが語る、ビジネス意識の変化とラベンハム

ラベンハムをよく知る方に、その魅力を語っていただく「MY LAVENHAM STORY」。今回は、ファッションディレクター、スタイリストとして活躍する森岡弘さんにお話をうかがいます。『メンズクラブ』の編集部でファッションエディターとして活躍後、芸能人やスポーツ選手、文化人や政治家のスタイリングや、ブランドのコンサルティングなども手掛ける森岡さんから見るビジネススタイルの変遷、そしてラベンハムの魅力とは。

 

ファッションディレクターが見てきた、メンズビジネスファッションとラベンハム

ラベンハムは『メンズクラブ』にいた時代から何度も取り上げていますし、その他の仕事でも何かと接点の多かったブランドです。個人的にも昔に1着持っていて、今のラインナップがこんなに増えていることに驚きましたが、僕にとっては常に「スタンダードアイテム」としてインプットされています。

90年代から今もビジネスシーンで着られる方が多いことは知っていますが、僕の中ではラベンハムは、どちらかといえばカジュアルなアイテムという認識です。スーツの上にポリエステルのジャケットを羽織るという時点で、ドレッシーなものにカジュアルな要素をぶつけているわけで、巧妙にハズしている感覚ですね。でも当然ビジネスマンのスタイルとしては颯爽としても見えるし、昔も今も違和感はまったく感じません。

服を着るのって、正しいドレスコードを○(マル)として、間違った組み合わせを×(バツ)だとすれば、本来×だけれど、この人が着ると気にならなくて◯に見える場合があります。その人の佇まいや着こなしによって◯にも×にもなる△(三角)のグレーゾーンをどのように取り込むかが一番楽しいんですよ。つまりその人となりだったり、その人だから成立してしまうような編集力のあるコーディネートこそ面白いわけです。同じコーディネートでもこの人には大丈夫、この人には難しいってことがあるのです。人によってグレーゾーンの遊べる幅が違うんですよね。そこが着こなしの面白さであり恐さでもあるのです。極端な話、ゴルフの時にラベンハムを着て行っても成立するかもしれないみたいなことです。もし上手く着こなせればの話ですが・・・・・。でもこれは相当難しい(笑)

基本的にファッションは突き詰めると、“痩せ我慢”だと思うんですよ。それはそれでいいんですけど、仕事着においては必要以上に重さや保温性の高いコートだと脱いだ時に手にあまる。最近だと通勤のスタイルもより機能的になってきていて、そういう中においてラベンハムはまさにちょうど良いポジションだと思います。軽いし、脱いでもシワになりにくいし、ちゃんとしても見えるけど、ドレスとカジュアルの融合も出来ています。グレーゾーンをうまく着こなせる人にはとても重宝し、快適かつ洒落っ気も演出出来る存在になると思います。

90年代くらいまでは、世の中的にもっとオンとオフの区分けが強かったです。今はビジネススタイルもカジュアルになってきていて、僕が仕事で接している商社やメーカーはもちろん、大きな企業を見ても、ネクタイをしないようになってきています。部署によって仕事内容も多岐にわたり違いもあるので、社内で一定のルールを作ることが難しくなっているようです。誤解を恐れずにいうと僕はそれはいい兆候だと思っています。

 

“服を着ることは、もはやビジネススキルのひとつなんです。”

長年メンズファッションやビジネススタイルを見てきて最近感じるのは、「今の時代が一番劇的に変わっている時期」に思えます。それはスタイルの問題だけではなく、仕事に対する意識の問題においてもです。簡単に言ってしまえば、これまでは景気が良かったというか(笑)、会社の傘の中に入れば、その人がどうこうよりも、会社がちゃんとしていればそれなりに世の中からは見てもらえていたんです。でも時代は今もっとセンシティブになってきていて、例えば営業職の人が“仕事を取ってきたら終わり”じゃなくて、その後もクライアントと密に仕事をしなければならないようになっています。昔よりも個人の仕事のフィールドや関わり方も広くなっているんですね。

そういう中では細かい配慮とか、目配せ、気配りみたいなことも必要になってきていて、そういう中でだらしない格好をしている人からは、とても細やかな配慮のある仕事振りは期待出来ません。その服装が、その着こなしが、仕事振りを語っているのです。新しい時代は個人の部分がよりフォーカスされているでしょう。例えて言うなら、「Aという会社の森岡です」ではなくて、「森岡です。今はAという会社に勤めています」という意識になってきている、もしくはそういう意識ではないと生き残れない環境になっていると思います。

そういう中で、服装はその人自身の性格や美意識や仕事振りが現れます。コーディネートはショップ店員の方にやってもらって完璧だったとしても、着る人がネクタイをうまく締めれなかったらだらしのない人にしか見えません。「今の時代服を着ることは、ビジネススキル」です。それは今までの時代にもなかったことではないと思います。服の変遷はこれまでにたくさんありましたが、このような意識の変遷は今が一番大きいんじゃないですかね。だからこそ、服を楽しみ、服をプレゼンテーションツールにすることによって仕事ぶりも上がる時代になっているんです。

 

自分のスタイルを作ることができるブランド

服屋さんは服が売りにくい時代でしょうね。いままでのように流行だけでは誘導できなくなってきていますいから・・・・。最近僕はパーソナルスタイリングの仕事もしているのですが、「これ、いま流行っていますよ」と言うと、「だったら要らない」という人が多いんです(笑)。流行っていることは知っていても、あえて乗らない。自分が欲しいもの、必要とするものを着て、自分自身をもっと気持ち良く、もっと自分らしくいたいと考える方が増えています。

そういう意味でも、ビジネスマンの意識のステージが上がったんだと思います。服装への意識が熟したというか。例えばヨーロッパ行ったら分かりますけど、流行りはあっても過剰に踊らされることはなく、“自分スタイル”を持っている人が昔から多いじゃないですか。日本も少しずつああいう風になりつつあるんじゃないですかね。

そういう中で、ラベンハムみたいな服はすごく良いポジションなのではないかと思います。あまり流行りには乗らず、コーディネートは自分次第でスタイルを作りやすいアイテムだと思います。時代を作るのは確かにモードなブランドかもしれないですけど、その一方で、スタイル作りが必要な服は別にあり、意識の変化によって再評価されています。オリジナリティのあるベーシックな単品アイテム。だから年齢や性別を越えて「ラベンハムが好き」というのはあり得ると思うんです。そういうスタンダードなものを“貴方ならどう着ますか”という時代になっています。

そうした中でラベンハムは、変えるところは変えつつも、残すところはしっかり守っていますよね。ここから先の時代に、僕がブランドに必要なのは“思想”だと思っているんです。絶対に根底の部分はブラさないところが評価されます。“永遠のアイテム”になるというのはそういうことだと思います。