MY LAVENHAM STORY – その7<br>ユナイテッドアローズ クリエイティヴ・ディレクターの鴨志田康人さんが語る<br>「“本物”のキルティングジャケットの魅力」。

MY LAVENHAM STORY – その7
ユナイテッドアローズ クリエイティヴ・ディレクターの鴨志田康人さんが語る
「“本物”のキルティングジャケットの魅力」。

MY LAVENHAM STORY – その7<br>ユナイテッドアローズ クリエイティヴ・ディレクターの鴨志田康人さんが語る<br>「“本物”のキルティングジャケットの魅力」。

ラベンハムをよく知る方に、その魅力を語っていただく「MY LAVENHAM STORY」。今回は(株)ユナイテッドアローズの創設メンバーであり、同社でクリエイティヴ・ディレクターとして辣腕を振るう鴨志田康人さんにインタビュー。長年メンズファッションの最前線で活躍し、日本のラベンハム人気を牽引したといっても過言ではない鴨志田さん。「軽くて、暖かくて、着こなしやすい」キルティングジャケットの着こなし方、そのオリジナルであるラベンハムの魅力についてうかがいました。

最初はイタリアで注目されたラベンハム

「実はキルティングジャケットの歴史は長く、このアイテムが英国のカントリースタイルそのものといってもいいくらいです。ラベンハムに出会ったのは1990年代でしたが、新しいとか新鮮とかいうよりむしろ、『本物のキルティングジャケット』であることに魅力を感じました。メンズウエアのルーツである英国の『本物』のアウターウエアを、日本のお客様にも着ていただきたい。そんな思いでバイイングさせていただいたのを思い出します」。

ユナイテッドアローズ(以下、UA)のバイヤーとして、鴨志田さんが最も多忙を極めていた1990年代。メンズウエアの中心地はフィレンツェのピッティ・ウオモ会場となっていました。そして当時のイタリアで注目されはじめていたのが、ラベンハムのキルティングジャケットでした。

「当時日本でブレイクしたクラシコイタリアというスタイルは、イタリア国内でもブームとなっていました。でも彼らが履くのは、必ずといっていいほどエドワード グリーンやクロケット&ジョーンズといった英国靴。アウターも、ジャケットの上にラベンハムを羽織る人が多かったですね。イタリア人というのは、英国、特にカントリーサイドのスタイルやアイテムというものが大好きで、スーツはイタリア製にこだわるけれど、靴やアウターについては英国のモノ作りを尊重する。そんな傾向があるようです」。

その後ご本人が愛用することになるラベンハムも、UAが初めて別注したベーシックモデル、現在の[DENHAM(デンハム)]だったそう。衿に使われているコーデュロイ生地を、ボディに使用するというユニークなものでした。

「シャイニーなポリエステルのボディとは違った、面白いものができるんじゃないかというのが狙いでした。もちろん、ラベンハムの象徴であるダイヤモンドキルトはそのまま。個人的には、ダイヤモンドキルトがなくてはラベンハムではない、くらいに思っています(笑)。オリジナルの良さを尊重しながら、いかにその良さを消さずに面白くアレンジできるか────これこそ、別注本来の醍醐味だと思っているんです。機能は必要な要素ではありますが、自分にとっては見た目が一番。クルマもルックス重視で、カッコいいかどうかが勝負なんです(笑)。もちろんラベンハムはルックスも機能性も兼ね備えています。そこに尽きますね」。

気負いなく、何気なく着るのがカッコいい

また「ラベンハムのような『本物』の良さのひとつとして、何にでも合ってしまうということが言えると思います」と語る、鴨志田さん。「オリジナルのものを着るというのがとても大事で、似たものではダメ。何かが違うんですよね」とも。カジュアルにもクロージングにも合うというラベンハムのキルティングジャケットの、具体的な着こなしアイデアも教えてくれました。

「我々セレクトショップの人間は、オリジナルのものをどう着こなすか、何と合わせればカッコイイかという目線でモノを見ます。海外のブランドを現地のスタイルのままご紹介するのもいいですが、自分なりの解釈で、それぞれが暮らす街にあった着こなしを楽しむという考え方も含めて、ご提案していきたいですね。色使い的なことでいえば、グリーンのラベンハムに茶のスエードブーツを合わせるというのは”いかにも”ですし、個人的にはトゥーマッチだと思います。都会暮らしをしているならば、あえてカントリーの匂いを排除するというのも手です」

機能性は十分備わっており、軽くて暖かいけれど、そのままカントリーっぽく着てしまうとちょっと野暮ったい。そんなキルティングジャケットがドレススーツに合わせられることこそが、ラベンハムの良さなのだとか。

「キルティングジャケットをスーツの上に着て、ちょっとドレスダウンをするのが『クールだね』と言われるようになったのは、ラベンハムだったから。実際、クリーンなウーステッドよりも起毛感のあるフランネルスーツの方が相性よく見えるのは事実ですが、今の時代にその定石にとらわれすぎてしまうと、”遅れてきたブリティッシュトラッド”な人になってしまいがちですよね。キルティングジャケットだからって、特に意識を変える必要はないんです。チェスターフィールドコートの代わりにラベンハムを着る。それくらいの方が、カッコいいと思います」。

そしてプライベートでラベンハムの魅力を感じた、こんなエピソードを披露してくれました。

「先日軽井沢に遊びに行ったんですが、軽井沢のライフスタイルにフィットした小さなセレクトショップ「GREEN FOG」を訪ねたんです。ラベンハムはもちろん、ハンターのブーツやバブァーのジャケットが余裕のあるお客様の”実用着”として展開されていて、とてもリアリティと説得力がある。そのせいか、東京のセレクトショップと同じものなのに、遥かにカッコよく見えたりするんですよ(笑)。軽井沢での週末用に購入したキルティングジャケットを、そのまま都心に戻ってビジネススーツに合わせる。それくらいの自然体で取り入れていただくのが、一番豊かで本当にカッコいい着こなし方なんじゃないでしょうか」。

変わらない「本物」の、圧倒的な強さ

「良くも悪くも野暮ったく見えがちな、英国の伝統的なカントリースタイル。でも、逆にそれこそが最大の魅力なんです。決して洗練されてはいないけれど、時代やトレンドに迎合してアップデートしたり、無理なモダナイズをしない。機能面で進化することはあっても、見栄えの良さを求めてデザインを変更するというのは、あまりないと思います。スタイリッシュにしてしまったら、『本物』の良さは失われてしまうんですよ。少なくとも僕はそう思っています。オーセンティックなデザインやフォルムを守り続けているラベンハムのキルティングジャケットは、コーディネートでいかに都会的に取り入れられるかが問われます。そういう面では、多くの方が取り入れやすく、同時に玄人ウケもいいアイテムなのではないでしょうか」。

メンズファッションの世界で多用される、ベーシックやオーセンティック、あるいは「本物」というキーワード。しかし「本物」を愛する鴨志田さんだからこそ、ベーシック志向により陥りがちな、コンサバ化の危険性も同時に指摘します。

「『本物』は確かに合わせやすく、取り入れやすいもの。でも実は、格好良く着こなすのが、とても難しいものなんです。ベーシックなものほど、着こなしは難しいといってもいいくらい。現代的なもの、トレンディなものは”着やすい”ですが、”着こなしている”というのとはちょっと違います。それに、ベーシックなネイビーブレザーやレジメンタルタイなどを、カッコよく”着こなしている”人はとても少ない。ただの”コンサバな人”に見えないように、意識することが大切かもしれません」。

 ラベンハムのキルティングジャケットが、UAで取り扱われてすでに20数年。最後に、その歴史を振り返ったうえで、未来への提言をいただきました。

「今後もラベンハムには、”オリジナル”を大事にし続けてもらいたいです。ただ、それだけでは時代とともに変化する、消費者のニーズを満たせません。サイズ感などディテールについては、柔軟に対応してほしいですね。まずはブランドとファクトリーが、存続し続けることが一番ですから……。これまでUAでは、数多のブランドをバイイング、紹介させていただいてきました。でもラベンハムのように20年以上途切れることなく取り扱い続けているブランドは、ほとんどありません。面白いことに、そういうブランドの多くは、英国のものなんです。英国的モノ作りの圧倒的な底力、『本物』だけが持つタイムレスで本質的な価値というものに、改めて気付かされてしまいますね」。